いくつになってもなくならないコンプレックスの一つに声がある。子供の頃、家庭用ビデオで自分の声を初めて聞いた時のあの衝撃。こんな声をしていたなんて恥ずかしい。だから、声がいい人はとってもうらやましい。
声のお仕事といえば声優さんだ。スター声優さんになれる人は本当にごくごくわずかで、それまではどう自分を売り込んでいくのか、売れない声優さんの辛さ、若手声優の苦労話は、声優さんであるあさのますみさんの「それが声優!」に詳しい。
体の中にストップウォッチがある?
無名の声優さんは、テレビ番組の制作会社から「男1人、女1人必要」というオーダーを受けて、声優会社からやってくる。外国人男性、外国人女性のアフレコだ。スケジュールが空いている人がやって来るのか、アテンド方法はわからないけれど、指定された場所に指定された時間の30分前にはいらっしゃる。海外ロケの番組で地元の人と話をしてい外国人の声の役という情報だけで、どんな人物なのかはまったく知らされていない。それも複数の声を1人で演じてもらう。年とった企業の重役と顔中ピアスだらけの若者の声を演じ分けろという注文だ。
さて、ここからが声優さんの腕の見せ所。現場に到着して、台詞が書かれたナレーション原稿を受け取り、声の持ち主の映像を見る。すると、1度見ただけで、まるでその外国人が日本語でしゃべっているかのように台詞をあてていくのだ。
当然、翻訳した日本語を現地語のしゃべりに合わせようとすると時間が違ってくる。英語の意味を日本語にすると長すぎたり短すぎたりするケースだ。声優さんは台詞のスピードに緩急をつけて調整していく。原稿にはしゃべり出すタイミングの時間が記入されているが、ボイスオーバー(別言語の声をあてる作業)の時はしゃべり終わりの時間も書かないといけない。つまり、何秒間に台詞を言うかが決め手。声優さんには時間の感覚が身に沁みこんでいるようだ。
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