参院選が目前に迫ってきた。争点の一つとなるのが憲法改正。中でも注目されるのが、戦争放棄をうたった「第九条」の行く末だ。与党が3分の2以上の議席を獲得すれば、破棄される可能性も出てくる。
そうなれば、安保体制は大転換。日本の国の形は一変する。果たしてそれでいいのか、悪いのか? 映画「第九条」は、日本の将来を左右する選択をめぐる、白熱のディスカッション劇である。
20代が出す答えが日本の運命を決める
20XX年、時の政府は日本国憲法第九条の改正について検討すべく、各年代別に諮問委員会を作り、九条を維持するか破棄するかの結論を求めた。その結果、20代以外の年代は維持と破棄が五分五分。残る20代の出す結論が日本の運命を決定づけることになった――。
このような前置きに続き、諮問委員会を構成する12名の若者が登場。弁護士、防衛大生、海外ボランティア、軍事オタク、ショップ店員、主婦、ロックミュージシャンなど、さまざまな職種・立場の男女が一室にこもり、九条の是非について議論していく。
まず憲法成立の歴史的背景、米ソ冷戦、沖縄の基地問題、北朝鮮による拉致など、九条に関連した状況を、弁護士や防衛大生らが要領よく解説。具体的な場面を想定しながら、議論を戦わせ、やがてロックミュージシャンやショップ店員といった無関心なメンバーをも引き込んでいく。議論に一大転機が訪れるのは休憩の後。一人のメンバーがトリッキーな行動で対立者を挑発したのを機に、無口だったメンバーが、猛烈に反論し、風向きを変える――この終盤の展開は圧巻である。
感情に走ることなく、現実を直視しながら冷静かつ論理的に思考、議論することがいかに大切かを、改めて認識させてくれる。投票の前にぜひ見ておきたい。
「第九条」(2016年、日本)
監督:宮本正樹
出演:南圭介、馬場良馬、タモト清嵐、松本寛也、荒牧慶彦、聡太郎、小笠原健、中村僚志、はねゆり、綱島恵里香、森レイ子、睡蓮みどり
2016年7月2日(土)、横浜ブリリアショートショートシアターほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。