クエンティン・タランティーノ監督第8作で初の密室劇「ヘイトフル・エイト」。大雪で閉ざされたロッジで展開するミステリーだ。サミュエル・L・ジャクソン、ティム・ロス、マイケル・マドセン、カート・ラッセルと監督作ではおなじみの面々が出演。美術は「キル・ビルvol.1」(03)の種田陽平、音楽は巨匠エンニオ・モリコーネ。
南北戦争時代の米西部。雪山を走る駅馬車を、元騎兵隊で今は賞金稼ぎのウォーレン(ジャクソン)が止める。馬車にはやはり賞金稼ぎのルース(ラッセル)、手錠でつながれたお尋ね者の女デイジー(ジェニファー・ジェイソン・リー)が乗っていた。
馬車は猛吹雪の中、中継地の「ミニーの紳士洋品店」を目指す。途中でさらに新任保安官マニックス(ウォルトン・ゴギンズ)を乗せて店に着いた。中で待っていたのは、店主のミニーではなく、見知らぬ男4人だった。偶然集まったような8人の過去が重なり始め、互いの疑心暗鬼は頂点に達する──。
疑心暗鬼が渦巻く物語の途中で時間軸が戻る
デジタル全盛の時流に逆らい、70ミリフィルムで撮影された作品。大雪原を走る駅馬車、訳ありの乗客たち。車内ではスラングが飛び交い、女性に容赦ない暴力がふるわれる。監督は最初から振り切れた演出を見せる。
店に着いた後は密室空間へ。登場人物が勢ぞろいし、舞台劇を思わせる会話が続く。せりふには伏線が張り巡らされているが、饒舌すぎてやや時間を持て余した感がある。しかし、最初の殺人が起きた後はタランティーノの真骨頂。血しぶき飛び散る凄惨な暴力演出をたたみかけながら、閉ざされた空間で犯人探しが展開する。意欲的な流れだ。
監督初のミステリーだが、内容はまぎれもなくタランティーノのもの。疑心暗鬼が渦巻く物語の途中で時間軸を戻し、監督自身のナレーションで状況を説明。推理情報を補完する演出など、一筋縄ではいかない我流を貫いている。監督の自信を感じるバイオレンス推理映画に仕上がった。
「ヘイトフル・エイト」(2015年、米国)
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、ウォルトン・ゴギンズ、デミアン・ビチル
2016年2月27日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。