映画「サウルの息子」/死体処理部隊の目からナチスの残虐行為をあぶり出す

ネメシュ・ラースロー 銀座

(C)2015 Laokoon Filmgroup

1944年10月、アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所。サウルはハンガリー系ユダヤ人で、死体処理に従事していた。ある日、サウルはガス室で生き残った息子らしき少年を発見。少年は目の前ですぐ殺されてしまうが、サウルはユダヤ教の聖職者を探し出し、教義にのっとって埋葬するために収容所内を奔走する──。

「サウルの息子」は無名の新人監督ネメシュ・ラースローのデビュー作にして、第68回カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した作品だ。同胞の死体を処理するユダヤ人の特殊部隊「ゾンダーコマンド」として働くサウルの目で、ナチスの残虐行為をあぶり出す。

あまりに生々しく、凄惨で息苦しくなる

冒頭からサウルの視点、行動、背後からとらえたカメラで、強制収容所での2日間がつづられる。ナチスの軍医が労働力にならないユダヤ人を選別する。彼らをガス室へ連れて行き、死体処理から後始末までこなす。

同胞に「シャワーを浴びさせる」とうそを言って安心させ、服を脱がせてガス室に入れる。間もなく中から叫び声や壁を叩く音が漏れてくる。「処理」が終わった後、コマンドたちは中の血や汚物を掃除し、死体の山を焼却炉に運ぶ。

生きるために感情を殺し、非人道的な行為に加担するサウル。しかし、自分の息子の死体を埋葬するため、ナチスの目をかいくぐり、危険な行動を起こす。絶望の中、親としての自尊心を保とうとしているかのようだ。

観客はサウルが見た狂気を画面を通して追体験する。自分の手を汚さず、残虐行為を強制するナチス。あまりに生々しく、凄惨で息苦しくなる。観客を突き放す幕引きを含め、負の歴史に個人の視点で踏み込んだ衝撃作だ。


「サウルの息子」(2015年、ハンガリー)

監督:ネメシュ・ラースロー
出演:ジェイソン・ステイサム、ジェニファー・ロペス、ニック・ノルティ、クリフトン・コリンズ・Jr.、ウェンデル・ピアース
2016年1月23日(土)、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

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