結婚5年目の夫婦。結婚記念日に事件は起きる。夫がちょっと外出したすきに、妻が失踪してしまったのだ。キッチンには大量の血痕があり、殺人の可能性も高い。夫に容疑がかかる。夫は無実を主張するが、次々と不利な材料が見つかり、どんどん追い詰められていく。疑惑を決定的としたのは「夫に殺されるかもしれない」と書かれた妻の日記だった。やがて、夫には若い愛人のいることが分かる。世間に知られれば、形勢はますます不利となる。窮地に陥った夫はニューヨークの敏腕弁護士を雇う――。
どの夫婦も経験するであろう幻滅と失望
冒頭に米ミズーリ州のさびれた街が映し出される。この街にある夫の実家が夫婦のすみかである。二人ともニューヨークでライターをしていたが、ともに失職して移ってきたのだ。末期がんを宣告された夫の母を看取る恰好の口実もあった。
夫にとっては慣れ親しんだ田舎暮らし。だが、根っからの都会人の妻には退屈以外の何ものでもない。おまけに夫は浮気をしているのだ。その不満と怒りが失踪を招いた可能性はある。しかし、なぜ血が流れされたのか。殺人だとして、殺す理由は何か。夫以外に犯人はいるのか。謎は謎のまま、物語は進んでいく。
ところが、中盤に突如として視点が変わり、事件の驚くべき真相が明らかにされる。そして、犯行はいまだ進行中であることが分かるのだ。謎が解かれたところで、息詰まるスリルとサスペンスの世界が始まる。はたして犯行は完遂されるのか? 二転三転の意表を突く急展開は、圧巻の一言である。
田舎育ちの夫と、都会育ちの妻。それだけではなく二人にはさまざまな違いがある。夫には双子の妹がいるのだが、親しさには通常の兄妹の範囲を超える過剰さが感じられる。一方、妻は少女時代から母親の書いた絵本の主人公として有名で、理想化されたイメージを保つことを、人生の至上目的としているようにみえる。
恋愛時代は覆い隠されていた相違が、結婚生活の中で次第に露呈し、我慢の限界を超えていく。映画の底部には、多かれ少なかれ、どの夫婦も経験するであろう幻滅と失望がある。見終わって戦りつするとともに、他人ごととは思えぬ共感を覚えるのは、夫婦の真相が描かれているからにほかならない。
米国で600万部以上売れたベストセラー小説の映画化。デビッド・フィンチャー監督が本領を発揮した極上のエンターテインメントである。妻役ロザムンド・パイクの鬼気迫る熱演にも注目したい。
「ゴーン・ガール」(2014年、米国)
監督:デビッド・フィンチャー
出演:ベン・アフレック、ロザムンド・パイク、ニール・パトリック・ハリス、タイラー・ペリー、キャリー・クーン、キム・ディケンズ
2014年12月12日(金)、TOHOシネマズ日劇ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。