ある地方都市に住む大学生の四谷夏子(通称:ぼん)。幼なじみで浪人生の友田麟太郎(通称:リン)。アニメ、ゲーム、BL(ボーイズラブ)が大好きなオタク同士の2人は、同棲相手にDV(ドメスティック・バイオレンス)を受けているという親友の斎藤みゆ(通称:肉便器)を救出しに東京へ。ネットゲームで知り合った中年オタクの会田直人(通称:べび)を助っ人に従え、みゆの彼氏である蟹江田敬三の自宅に踏み込むが――。
妄想の世界に情熱を燃やすヒロイン"ぼんちゃん"が、厳しい現実の壁に跳ね返されながらも、正義を信じ奮闘する姿をコミカルに描いた「ぼんとリンちゃん」。小林啓一監督は、「自分の中にないものへ一歩踏み出す勇気は、いくつになっても必要だ」と語った。
オタクが主人公だからと言って他人事として見ないでほしい
――オンラインゲームでオタクと知り合ったのがきっかけで、本作を着想したそうですね。
ゲームで知り合ったオタクとその仲間たちに会って、オタク観がひっくり返った。彼らに会う前まで、映画やドラマによく出てくるような、暗くてシャイなオタクを想像していた。しかし、現れたのは小奇麗で爽やかな若者たち。コミックやアニメに熱い情熱を注ぐ彼らの生き方に、とても刺激を受けた。将来やりたい仕事とは別に、「一生これと付き合っていくんだ」という覚悟も感じられ、興味をひかれた。
――そんなオタクが、慣れ親しんだ自分たちの世界を飛び出し、厳しい現実の世界に足を踏み込む、という話ですね。
そう。でも、それはオタクに限ったことではない。たとえばサラリーマンにしても、自分の職務や会社のルールの中でしか動いていない。会社から1歩外に出ると、勝手がわからず、途方に暮れる人も多いと思う。だから、オタクが主人公だからと言って、決して他人事として見ないでほしい。自分の中にないものへ一歩踏み出すには、ちょっとした勇気が必要だ。そして、その勇気はいくつになっても持ち続けなければいけないと思う。
――ぼんちゃん役は佐倉絵麻、リンちゃん役は高杉真宙。ともに初主演です。キャスティングする決め手となったのは?
ぼんちゃん役は、耳にピアスの穴を開けていないことが条件だった。そして身長が高いこと。この2点を満たす子はいないかと考えていて、ふと頭に浮かんだのが、ミュージックビデオなどを見て前々から注目していた佐倉さんだった。会ってみると、ちょっと垢抜けない感じが、アイドルっぽくなくて新鮮な印象。早口でぼそぼそとした喋り方も気に入った。「よし、彼女ならやれる!」と思った。
リンちゃん役は、可愛いけれど、性的なものを匂わせてはいけない。そんな子を探していたところ、たまたま真宙くんの存在を知った。会ったとたん意気投合して、彼に決めた。
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