ジョン・ウー(呉宇森)監督の「レッドクリフ」(08)2部作、チャウ・シンチー(周星馳)主演の「少林サッカー」(01)などに出演した中国の人気女優、ビッキー・チャオ(趙薇)。初監督作となったのが「So Young 過ぎ去りし青春に捧ぐ」だ。
1990年代の中国。18歳の女子学生チョン・ウェイ(ヤン・ズーシャン=楊子[女冊])は、期待に胸をふくらませてキャンパスに足を踏み入れた。好きだった先輩を追い、同じ町の別の大学に進学したのだ。ところが、先輩はすでに米国留学に旅立っていた。はしごを外され落ち込む彼女を、優しい友人や先輩が元気づける。
持ち前の明るさで大学生活を謳歌するチョン・ウェイはある日、真面目で無口な男子学生シアオチョン(マーク・チャオ=趙又廷)と出会う。性格は正反対、顔を合わせればけんかの二人だったが、チョン・ウェイの気持ちは次第に恋心に変わる。やがて二人は恋人同士となり、幸せな大学生活は瞬く間に過ぎる。卒業の季節。二人は人生の転換点に差しかかる──。
古き良き「あのころ」
ビッキー・チャオの北京電影学院監督科修士課程卒業作品。同学院で過去最高の評価を得たという。中国の若者世代、いわゆる「七十後」「八十後」(70、80年代生まれ)の青春をみずみずしく描き、興行収入7億元(約120億円)を突破する大ヒット。ハリウッド大作がひしめく13年の中国興収番付で3位に食い込んだ。
舞台となった90年代、中国は改革開放の波にもまれ、社会的価値観や市民生活が急激に変化していた。香港スターの写真、英国バンドのヒット曲。海外から流れ込む文化に、若者たちは心躍らせていた。ロケ撮影は当時の雰囲気が残る場所を探し、中国各地の大学10か所以上で行われたという。
人気、実力とも中国を代表する女優の一人、ビッキー・チャオの初監督作だけに、俳優やスタッフも豪華だ。製作は「ルージュ」(88)、「藍宇 情熱の嵐」(01)などの香港出身スタンリー・クワン(關錦鵬)監督。シアオチョン役には「モンガに散る」(12)で注目を集めた台湾のマーク・チャオを起用した。
中国経済が上昇気流に乗り始め、誰もが未来に夢を抱いていた時代。急速に変わる中国社会では、90年代も懐かしむべき古き良き「あのころ」のようだ。シンプルでストレートな青春恋愛映画が、なぜ今中国で大ヒットしたのか。背景を考えつつ観ても面白い。
「So Young 過ぎ去りし青春に捧ぐ」(2013年、中国)
監督:ビッキー・チャオ
出演:マーク・チャオ、ハンギョン、ヤン・ズーシャン、ジャン・シューイン、チャン・ヤオ、リウ・ヤーソー、ジョン・カイ、バオ・ベイアル
2013年9月13日(土)、新宿シネマカリテほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
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