団鬼六の官能小説「花と蛇」。1974年の谷ナオミ主演を皮切りに、日活ロマンポルノとして13年間に計5回映画化された。2004年には杉本彩主演、石井隆監督で東映ビデオ作品として復活。続編も2本作られた。今回の「花と蛇 ZERO」は、主人公・遠山静子を含む女性3人の物語となっている。主演3人はオーディションで選ばれ、「探偵はBARにいる」(11)の橋本一監督がメガホンを取った。
クライマックスは観客も参加の仮想ライブと化す
監禁女性の調教シーンをライブ配信する闇サイト「バビロン」。そのアジトに潜入した警視庁生活安全部の警部・雨宮美咲(天乃舞衣子)は、犯人グループに全身に入れ墨をした妹・美冬がいると知る。美咲が妹を見逃してかくまったため、その秘密を知った謎の男が脅迫。美咲を性の奴隷に変える。一方、男から情報を入手した美咲は、自ら"志願奴隷"として「バビロン」に潜入する。
一方、専業主婦の瑠璃(桜木梨奈)は忙しい夫に相手にされず、チャット仲間から「バビロン」の存在を聞く。遠山静子(濱田のり子)が責められる様子がサイトに映り、それを見た瑠璃は眠っていた性癖を解放していく。静子は夫(津田寛治)が背負った莫大な借金の肩代わりとして、「バビロン」に登場していた。
ヒロイン3人の物語は、ばらばらに動き出す。紆余曲折を経て最終的に「バビロン」に集結。三つどもえの緊縛ショーが繰り広げられる。ショーはクライマックスを迎えるが、舞台裏では静子を狙うわなが仕掛けられていた──。
東映京都撮影所出身、「新・仁義なき戦い 謀殺」(03)でデビューした橋本監督。「探偵はBARにいる」、「臨場 劇場版」(12)、「相棒シリーズ X DAY」(13)、ドラマ「科捜研の女」などを演出し、東映作品を支える若手監督となった。今回は檀蜜主演「私の奴隷になりなさい」(12)の脚本家・港岳彦と組み、まったく新しい「花と蛇」を生み出した。
官能小説の金字塔「花と蛇」の題名を聞くと、コアな映画ファンでも腰が引けてしまう。そんな名作に橋本&港コンビは大胆な新解釈を加え、SMエンターテインメントに仕上げた。闇サイトを追う美咲の刑事ドラマをベースに、背景として遠山静子の悲劇を描く。それをのぞき見る瑠璃のコミカルな視点。ハードな物語のガス抜きとなってバランスが保たれる。
クライマックスの緊縛ショーは、スクリーンを通して観客も参加させる仮想ライブと化す。静子の禁断の恋愛関係、謎の男の正体など展開は意表を突き、最後までサービス精神に徹した作品だ。
「花と蛇 ZERO」(2014年、日本)
監督:橋本一
出演:天乃舞衣子、濱田のり子、桜木梨奈、津田寛治、川野直輝
2014年5月17日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。