子供の頃からいじめられっ子で、大人になっても冴えない携帯電話販売員のポール・ポッツ(ジェームズ・コーデン)。シャイで謙虚、自信のかけらも持てない彼の夢は「オペラ歌手」になること。憧れのパバロッティの前で歌う機会を得るが「君はオペラ歌手にはなれない」と一蹴され、自信を失くしてしまう。しかし愛する妻や友達に励まされ、勇気を奮い立たせてオーディション番組に応募する──。
運の悪いポッツは、大事な時にいつもチャンスを逃す
英オーディション番組に出場し、オペラ「トゥーランドット」の挿入歌「誰も寝てはならぬ」を熱唱。一夜にしてスターとなったポッツのサクセスストーリー「ワンチャンス」。監督は「プラダを着た悪魔」(06)のデビッド・フランケル、ポッツ役を「三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」(11)のジェームズ・コーデンが演じている。劇中コーデンが歌う曲はポッツ本人の吹き替えた。
「冴えない携帯電話販売員が、オーデション番組で優勝してスターになった」。そんなポッツの物語は世界的に有名だが、人生そのものは意外と知られていないのではないか。
英ウェールズの教会で聖歌隊に在籍したポッツ。子供時代は太った容姿をからかわれ、いじめられていた。しかし青年になって初めてのガールフレンドができる。1年以上メールを交換してきたジュルズ(アレクサンドラ・ローチ)だ。初デートで意気投合したポッツは「お金を貯めてベニスのオペラ学校に留学する」と打ち明ける。
実話のため、多くの人々は「ポッツがオペラ歌手として成功した」ことを知っている。いわば結末を知ってから観る作品だ。そこで監督はあまり有名ではないボッツの生い立ち、アマチュア時代に焦点を当てる。少年時代、恋愛、留学、パバロッティの酷評と挫折など、過去がダイジェストで描かれる。運の悪いポッツは、大事な時に病気や事故でチャンスを逃す。そして最後のチャンスになったのが、あのオーディション番組だったのだ。
小さな運から人生を切り開いたポール・ポッツ。ぽっと出の素人スターと思われがちだが、並々ならぬ苦労と努力を重ね、実力がありながらも外見で損をしていた男。コーデンのキャラクターと、英国映画らしいウィットとユーモアで、暗くなりそうな物語が前向きになる。夢と勇気を与えてくれる心地良い作品だ。
「ワンチャンス」(2013年、英国)
監督:デビッド・フランケル
出演:ジェームズ・コーデン、アレクサンドラ・ローチ、ジュリー・ウォルターズ、コルム・ミーニー、ジェミマ・ルーパー
2014年3月21日(金・祝)、TOHOシネマズ有楽座ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。