1950~70年代に人気を博した米国のピアニスト、リベラーチェ。晩年の恋人スコット・ソーソンによる回想録をもとに、スティーブン・ソダーバーグ監督がその半生を映画化した。
ドナ・サマーのディスコ音楽「I Feel Love」が流れるロサンゼルスのゲイバー。カウンター越しに二人の男が見つめ合う。犬のトレーナーのスコット(マット・デイモン)と振付師ボブ(スコット・バクラ)が出会う短いシーンで、観客は一気に1977年に導かれる。
意気投合した二人はラスベガスを旅行。リベラーチェ(マイケル・ダグラス)はボブの友人だった。公演先のホテルの楽屋で、二人は初めて対面する。スコットに同性愛者の匂いを感じたリベラーチェは、自宅に呼び寄せてあれこれ頼みごとをする。悩みを打ち明け、「住み込みで秘書になってくれ」と懇願。スコットは仕事を捨て、リベラーチェの秘書兼愛人として働き始める。
きらびやかな衣装を身につけ、高度な演奏を披露するリベラーチェ。クラシックからポップスまで自在にこなし、あっと驚くパフォーマンスでラスベガスの観客を魅了する。正真正銘のエンターテイナーだ。「悪趣味」と煙たがる人もいる一方で、衣装や派手なステージはエルビス・プレスリーやエルトン・ジョンに少なからぬ影響を与えたという。
ソダーバーグ監督、休業前最後の作品 文句の付けようのない
「恋するリベラーチェ」」は、さまざまなエピソードを盛り込みながら、その特異な横顔を浮き彫りにする。欧米をまたにかけ活躍するスターである一方、人目を極度に気にし、美容整形を繰り返していた。スタートしての光の部分と対比させるように、秘密にしていた影の部分をあぶり出す。
一歩誤れば下世話になりそうな物語も、そこはソダーバーグ。時代の空気をリアルに再現しつつ、無駄のない語り口とドライな演出で描き切った。リベラーチェ最後のステージは、幻想的なミュージカル演出で感動を呼ぶ。
ダグラス、デイモンの熱演も光る。この作品を最後に休業宣言したソダーバーグ監督だが、文句の付けようのない仕上がりだ。「追憶」(74)、「スティング」(74)、舞台「コーラスライン」の作曲家、マービン・ハムリッシュの遺作にもなった。
「恋するリベラーチェ」(2013年、米国)
監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:マイケル・ダグラス、マット・デイモン、ダン・エイクロイド、スコット・バクラ、ロブ・ロウ、トム・パパ、ポール・ライザー、デビー・レイノルズ
2013年11月1日、新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。