2005年、母親にタリウムを投与した少女が、毒殺未遂の疑いで逮捕された。7月6日公開の「タリウム少女の毒殺日記」は、実際の事件をもとにしたフィクションだ。少女はなぜ母を殺そうとしたのか。なぜ少女を主人公にした作品を撮ったのか。土屋豊監督は「観察者としての少女が、世の中をどう見るか描いた」と話す。
映画の中の彼女の言葉は7~8割がブログからの引用
──自分を"僕"と呼ぶ女子高生が、タリウムを投与した母親の体に起きる変化を動画として記録。ブログに掲載していく過程が描かれる。技術が人間与える影響への問題意識は、前作「PEEP"TV"SHOW」(03)と共通する。相違点はどこか。
大きく変わったのはインターネットの普及とSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の発展。前作は監視社会がテーマだったが、今は他人とつながるため、自らデータを提供して自分の居場所や個人情報を示し、ネットに入り込む時代になった。
──女子高生の独白をメインとしつつ、いきなりカメラの背後にいる監督との対話が始まったり、科学者の解説シーンが挿入されるなど変則的な構成だ。なぜこのスタイルを選んだのか。
資金を集めるため、当初は普通のドラマ構造を持った作品を企画し、脚本まで書いた。しかし、自分の目指す方向ではなかった。既存のフォーマットを壊すため映画を始めたことを改めて思い、過去の映画にない構成をとった。
──実在の少女が書いたブログをベースとしている。どこまでが事実で、どこからフィクションか。
少女が書いたブログを見た印象をもとに、彼女を(撮影時の)2011年に連れてきたら、どう世界を見るだろうと想像した。映画の中の彼女の言葉は7~8割がブログからの引用だ。
ブログを読んで興味深かったのは、観察者の視点があったこと。アリやハムスターと同じように母親を観察している。そんな彼女が今の世の中をどう見るのか描きたかった。
「タリウム少女の毒殺日記」(2012年、日本)
監督:土屋豊
出演:倉持由香、渡辺真起子、古舘寛治、Takahashi
2013年7月6日、渋谷アップリンクほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。