様変わり渋谷に戸惑う「迷子」...なんだか「恋の迷宮」と似てないかなあ
今週末がもう最後だろうなと思って、夜桜見物を兼ねて仕事場の渋谷から世田谷の自宅まで歩いて帰ることにした。約45分の道のりで、夜風に吹かれながら多少イラついている気持ちを抑えるためにも、このぐらいの散歩はちょうどいい。
ふ~らふらと渋谷の街を歩きながら、あることに気が付いた。あれっ、この道が一方通行でなくなるんだ。渋谷東急本店と旧山手通りをつなぐ、歓楽の円山町を横に見ながらテクテク歩く1キロもない坂道である。
途中には数々の飲食店が立ち並び、数年前には大爆発を起こしたスパ施設のビルなどがあったところだ。今までちょこちょこと工事していたその道に、双方向道路になるという案内看板が出ていた。渋谷の松濤界隈は一方通行が多く、車で移動するとき、とてもまどろっこしい。それが旧山手通りから渋谷センター街までスイスイと走ることができるようになればとても便利でありがたい。
新しくなった途端に忘れてしまう見慣れた街角
そういえば、3月半ばになってから渋谷の街はずいぶんと様変わりした。東横線の地下化と、少し足をのばすけれど下北沢周辺駅の地下化。この辺りを拠点としている住民にとっては大きな変化だ。テレビでもそれぞれの駅の最終日の様子が報道されていたが、利用者には毎日がガラリと変わる瞬間だった。
東横線が副都心線と同じホームとなり、これまで渋谷始発しかなかったのに、滑り込んでくる電車にすでに人が乗っているという不可思議。最初は少々戸惑った。隣りの代官山駅までほぼず~っと地下を走るということにも鉄ヲタな私は興奮してしまう。
どうなってんだ、東京の再開発。ものすごいことが長い時間かけて行われていたんだと改めて実感する。渋谷駅周辺や新宿駅周辺、そして池尻駅周辺の首都高速の工事は確かにすごかった。いったい何年かけてんだと思えるほど、ずっと工事中という印象だった。
工事でベールに包まれていたものが、ある日姿を変えて現れる。あれ、前は何が建っていたっけ。日本初となったH&Mで賑わうのはかつてブックファーストがあったところだけど、ビルはいったん取り壊したし、それまで何があったか思い出せない。渋谷の東急本店前でウェンディーズが撤退し、今はすしざんまいで人の流れが復活したけれど、あのビルも数年は空き店舗だった。知っている街なのに、随分と迷ってしまうことがある。
それは、何かに似ている。たとえば、いつしかすれ違ってしまった恋人の心。気付かないうちに、小さな火種が随分と2人の心を遠ざけてしまっている。そして何度も通っていたのに姿を変えた街に戸惑うのは、自分の心に似ている。どれだけ把握していると思っていた自分の心も、一度恋の迷宮に陥るとまったくわからなくなる。なんだかそれに似てる。
あぁ、桜は散る。花の命は短い。人は女の命を花の命に例えた。いつまでたっても街の再開発のように定まらない自分の現状にいらつきながら、今を盛りと咲く夜桜を眺めつつ、一人家路につく夜だ。
モジョっこ
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。