日本フラメンコ界の先駆けを追ったドキュメンタリー映画「長嶺ヤス子 裸足のフラメンコ」が3月23日公開され、長嶺と大宮浩一監督が東京都内で舞台あいさつした。77歳の今も現役で踊る長嶺は「これからもずっと、一生懸命踊っていきたい」と語った。
長嶺は3歳で踊りの道に入り、17歳でフラメンコを開始。スペイン留学を経て第一線で活躍した後、日本の古典を取り入れた創作舞踊に取り組むなど、生涯を踊りに捧げてきた。大宮監督は「2年前の春、東日本大震災の衝撃でカメラを持てなくなった。長嶺さんに出会ってエネルギーを受け、映画に引き戻してもらった」と涙ながらに振り返った。
一方の長嶺は、いたってマイペースな話しぶり。「映画はまあまあです。きれいなところばかり撮っていて、私の本当の部分、醜さまでは出ていない。私を踊り手としてとらえず、違う方向から見ているので面白いのでは。踊りを見たい人には不満でしょうが、一生懸命撮ってくれました」と語り、客席の笑いを誘った。
日本人にフラメンコの本当の意味は分からない
観客の一人が「なぜそんなに正直に生きられるのか」と尋ねると、「うそをつくのは大変。正直の方が簡単。生きるために時々うそをつくけれど、何を言ったか忘れちゃう」と即答し、客席から拍手が上がった。
さらに、劇中で触れている「日本人の踊るフラメンコ」を嫌う理由について「気持ちも言葉も違うので、日本人にフラメンコの本当の意味は分からない。(踊りを)自分のものにしてからでないと、その国の言葉で歌ったり、踊ったりするのは無理。日本人は思い上がっていて、『これぞフラメンコ』と思って踊るので嫌いです」とばっさり。胸のすく答えで会場を大いに沸かせた。
「長嶺ヤス子 裸足のフラメンコ」(2013年、日本)
監督:大宮浩一
出演:長峰ヤス子
2013年3月23日、新宿K's cinemaほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。