大ヒットシリーズ「マトリックス」のウォシャウスキー姉弟最新作「クラウド アトラス」。デビッド・ミッチェルの同名小説を、「パフューム ある人殺しの物語」(2006)のトム・ティクバと共同監督した壮大な叙事詩だ。
時代設定は19~24世紀。舞台は南太平洋、スコットランド、サンフランシスコ、ロンドン、ソウル、ハワイ。時間も場所も異なるエピソード6つが、アトランダムかつ同時並行で出現する。ドラマ、SF、コメディー、サスペンスなどさまざまなジャンルがシャッフルしながら、人間の行動や思想が奇妙に絡み合い、影響を与え合う様子を描く。
エンドロールには役の種明かしも
その中心にいるのがトム・ハンクス演じる主人公の男。男は時代とともに悪人から善人、悪人から善人へと変化する。ハル・ベリーら他の登場人物も同様だ。俳優たちは特殊メークで性別、人種、国籍を超え、各エピソードで別人となって登場する。
中でもウォシャウスキー姉弟が個性を発揮した近未来SF「ネオ・ソウル」のパートが見事だ。「空気人形」(2009)など日本映画でも活躍する韓国の女優ペ・ドゥナの好演と、監督の持ち味であるサイバーパンク世界で展開するアクションは必見。このエピソードだけで単独作品として通用するクオリティーで、姉弟の才能を再認識した。
あえて複雑な構成をとりながら、俳優それぞれが演じた役の種明かしをエンドロールで流す。リピート再生されることを意識したスタイルで、監督からビデオ世代への挑戦状にも感じられる。
「クラウド アトラス」(2012年、米国)
監督・脚本:ラナ・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー、トム・ティクバ
出演:トム・ハンクス、ハル・ベリー、ジム・ブロードベント、ヒューゴ・ウィービング、ジム・スタージェス、ペ・ドゥナ、ベン・ウィショー、ジェイムズ・ダーシー、ジョウ・シュン、キース・デヴィッド、スーザン・サランドン、ヒュー・グラント
2013年3月15日、新宿バルト9・丸の内ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。