携帯電話もパソコンもなかった20年前の恋愛ドラマ―生き残ったのは主題歌
テレビで1992年のドラマ「ホームワーク」の再放送がOAされていた。ドラマ主題歌は稲垣潤一の「クリスマスキャロルの頃には」。当然、リアルタイムで流行っていることを知っているのだが、ドラマの主題歌だとは恥ずかしながら知らなかった。今年のクリスマスにもやっぱりこの曲は流れていたし、もはや有無を言わさぬクリスマスソングとして定着している。
当時、子供心に「大人って大変なんだなぁ~。な~んかスキャンダラスでドキドキする」と感じていたものだ。あらためて初々しい福山雅治や唐沢寿明の映像と共に、新鮮な印象でドラマをついつい見てしまった。
それにしても、20年も経っていないのにこうも恋愛をめぐる状況は変わったのかと驚いてしまう。当然、携帯電話もごく一部の富裕層しか普及しておらず、連絡を取るには固定電話。職場のデスクにPCはなく、FAXとかでやり取りしている。相手が今何をしているのか、あらぬ想像をしてしまうのが恋心というもの。ツイッターでつぶやいて大騒ぎになることもなく、当時の若者達は、よく耐えているなぁと関心してしまった。
時代はバブル崩壊に人々が気付き始めた頃なんだろうが、それにしてもドラマの登場人物たちは、お気楽で何か前向きで能天気なことを言っているような気すらする。あんな気味の悪いド派手なジャケットを着た筧俊夫演じる青年実業家を好きになることはないだろうし、清水美沙が履いている役柄の内気な性格をそのまま表したようなタイトのロングスカートなんてマッピラゴメン。でも、あの時代に20代を過ごしていたら、ずいぶんと楽しかったのかもしれないとも思える。
「クリスマスキャロルの頃には」は今年も流れている
それでも主題曲の「クリスマスキャロルの頃には」はエターナルソングとして定着し、歌われた男女の仲もいつの時代にも共感を呼ぶが、ドラマは20年近く経ってしまうと、ストーリー展開も設定も成立しがたい状況になっている。なんとも皮肉なもんだ。
テレビ局側としては、再放送で枠を埋めるのに「クリスマスの名曲」×「福山龍馬伝効果」×「セカンドバージン世代が20代だった頃」というドビンゴなドラマだったので放送したのだろう。視聴率はどこまで狙っていたかは定かではないが、ある程度の人に郷愁を持って受け入れられたのではないだろうか。
時代を切り取り、かつ将来にわたって愛されるのがヒットソング。ある新聞で、本来は世間に対して意義や不満を歌にするようなヒップホップ系アーティストでも、「家族の絆、友達を大切に~」と柔らかいことばかりを歌っている世の中はどうなのかと疑問を呈している作家の記事が掲載されていた。時代を映す歌。そういう意味では、最近はドキっとするような歌詞は少なくなっているよう思う。世間では人間関係の希薄さを象徴するような事件が起きた1年だったからこそ、彼らは声高に「家族の絆」を歌っているのかもしれないが。今年はパっとしたクリスマスソングもなかったし。耳慣れたクリスマスソングを聞きたくなるのが、人々の心情でもあるんだろう。
来年は、これからの新定番となるような楽曲やドラマが誕生してくるのだろうか、同業者ながらとて気になり楽しみである。
モジョっこ
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。